ハリマ化成グループ

パインケミカル

松やに(ロジン)を訪ねて

16.彫金(ちょうきん)と松脂(ロジン)

彫金・ギャラリー・忠にて

彫金・ギャラリー忠は、数年前に亡くなった野沢さんの父、正次さんが始められ、現在は息子の忠義さんが受け継いでいる。
彫金の仕事は根気のいる仕事だが、野沢さんはデザインから彫金に至るまで独りでこなしている。正次さんは彫金歴70年で数多くの技法を身につけられていたという。忠義さんも父に負けない技術を持つ彫金師である。
彫金・ギャラリー忠には野沢さんの作品が所狭しと並べられ、その見事な彫金に感じ入る。
「松脂といえば昔はチャンといっていたことを聞いたことがあります。何処でかは忘れましたが、多分親父が仕事場で使っていたのではないでしょうか」と野沢さん。チャンという言葉を耳にしタイムスリップしたような懐かしさ。因みに松脂(ロジン)は昭和の初め頃までチャンと呼ばれていたことがあり、国産の松脂を「和チャン」、輸入松脂を「洋チャン」と呼んで区別していた。チャンとは瀝青(れきせい)のことでchian turpentineの略である。瀝青とはコールタールから揮発分を除いた残りかすのことでピッチとも言う。

画像 野沢さんの作品 壺と香炉の写真
野沢さんの作品/壺と香炉

野沢さんによれば、鏨(たがね)などの道具と同じように松脂は彫金には欠かせないものですが、残念なことに彫金の仕事も昔ほど多くはなく、松脂を使う機会も減ってきているそうです。

松脂が使われる「やに」/やに台の作り方

壁面や壺などにみられるレリーフ、香合、帯留め金具などの精密な金細工は、鏨(たがね)を使って金属板にレリーフを作り出す、打ち出しといわれる彫金の技法です。このときに金属板を固定させる道具が「やに」(やに台)です。やにには松脂が使われており作品によって軟らかくしたり、硬くしたりして使いやすいように加工します。

やにの材料と作り方

調合例:松脂(ロジン)500g/地の粉(珪藻土の粉末)500g/ひまし油またはごま油など30g/松煙煤少々。
まず松脂を鍋に入れて熱で溶かします。そのあと地の粉を入れてよく混ぜた後、油を入れ滑らかになったら松煙を入れて型枠に入れて冷やします。松煙は松の木、菜種油などを燃やして煤とし、集めたもので墨の原料などに使われていますが、黒いと金クズがよく目立つために作業性が良いそうです。油はやにの硬軟をコントロールするために使われます。

画像 やに台の作り方の写真
混ぜ合わされたやに

地の粉(珪藻土の一種の黄土を蒸し焼きにして粉砕した粉末)と松脂を混ぜ合わせることによって、密着性が高まる。

画像 やに台の作り方の図解
小石を木台入れ安定させる。

彫金(マコー社)菱田安彦著より

彫金の工程

見せていただいた彫金の方法について簡単に説明します。

  1. まず、銅版やその他のものに彫られた文様に絵の具を塗る。
  2. この上に雁皮紙(和紙の一種で、手紙などに使用される)をのせ、文様を写し取る。(図−1)
  3. 写し取った文様を、あらかじめ絵の具を塗った皿に転写する。
  4. やに台をバーナーであぶり少し軟らかくして、転写した皿の裏面と接着させ固定する。(図−2)
  5. 固定された皿を鏨(たがね)などで彫金する。(図−3)
画像 彫金の作業風景の写真1
図−1
画像 彫金の作業風景の写真2
図−2
画像 彫金の作業風景の写真3
図−3

棗(なつめ)や壺などの場合にはやにを温かいうちに内部に入れ、やにを緩衝材にして表面を鏨(たがね)でたたき文様を打ち出します。彫り終わったら中のやにを溶かして出し、カセイソーダで洗浄して完全にやにを取り除く。

参考図書
  1. 金工の伝統技法(理工学社) 香取 正彦著他
  2. 彫金の技法(雄山閣) 小川 千恵子著
  3. 彫金(主婦と生活社) 望月 正子著
  4. 彫金・モダンジュウリー入門(マコー社) 菱田 安彦著
  5. 日本大百科辞典(小学館)
  6. 百職百人 東京の職人(淡交社) 清澤 一人著
彫金関係のホームページ
  1. 蝋型鋳金 http://www.harima.co.jp/pine_chemicals/trip/06/index1.html
  2. 彫金の工具 http://www.araitool.co.jp/