彫金・ギャラリ-・忠にて
彫金・ギャラリ-忠は野沢さんのお父さんが始めて、現在は息子さんの忠義さんが受け継いできている。
彫金の仕事は根気のいる仕事ですが、野沢さん宅ではデザインから彫金に至るまで独りでこなしている。お父さんもこの道70年で彫金は何でもこなしたが、忠義さんもそれ以上に何でもこなす彫金師である。
彫金に松脂が使われているという情報は、本屋で購入した「百人百職・江戸職人(淡交社)」にのっていた写真の説明の項に一行ほどあったので、それを頼りに野沢さんに電話し取材お願いしたわけです。残念ながらお父さんの正次さんは数年前に亡くなっていたが、息子さんの忠義さんが取材を受けて下さったわけです。
彫金・ギャラリ-忠には野沢さんの作品が所狭しと並べられ、その見事なできばえはさすが彫金と感じ入ります。
松脂の話を始めると、野沢さんから松脂といえば昔チャンといっていたことを聞いたことがあるとのことでした。何処でかは忘れたが多分親父が仕事場で使っていたのではないでしょうかとのこと。のっけからチャンという言葉が出てきて、びっくりするとともに何かタイムスリップしたみたいで、なつかしい気がした。因みに松脂は昭和の初め頃までチャンと呼ばれていたことがあり、国産の松脂(ロジン)を和チャン、輸入松脂を洋チャンとよんで区別していた。チャンとは瀝青のことでchian turpentineの略である。(広辞苑:岩波書店) 瀝青(れきせい)とはコ-ルタ-ルから揮発分を除いた残りかすのことでピッチとも言う。

野沢さんの作品/壺と香炉
野沢さんによれば、鏨(たがね)などの道具はもちろんのこと、松脂は彫金には欠かせない大切なものとのこと。残念なことに彫金の仕事も昔ほど多くはなく、そのためか松脂を使う機会も減ってきていますとのことです。
松脂は此処に使われます。/やに台の作り方
壁面や壺などにみられるレリ-フ、香合、帯留め金具などの精密な細工は、打ち出しといわれる彫金の技法です。鏨(たがね)を使って金属板にレリ-フを作り出すことを打ち出しといいますが、このときにこの金属板を固定させる道具がやに(やに台)です。やには作る作品によって軟らかくしたり、硬くしたりして自分の使いやすいように作ります。
やにの材料と作り方》
一例→→→松脂(ロジン)500Gr/地の粉500Gr/ひまし油またはごま油など30Gr/松煙煤 少々 まず、松脂を鍋に入れて溶かします。そのあと地の粉を入れてよく混ぜます。次に油を入れ、滑らかになったら松煙を入れて型枠に入れてできあがりです。松煙は松の木、菜種油などを燃やして煤とし、集めたもので墨の原料などに使われますが、ここで使われる目的は着色剤として、また金クズが目立つように黒い煤を使います。油はこのやにの硬軟をコントロ-ルするために使われます。


混ぜ合わされたやに
地の粉・・・珪藻土の一種の黄土を蒸し焼きにして、粉砕した粉末。地の粉と松脂を混ぜ合わせることによって、密着性が高まるといわれています。

彫金(マコ-社)菱田安彦著より
木台に小石を入れるのは、木台を重くして安定化するため。
彫金の工程
彫金の方法は色々とあるが、今回見せていただいた彫金の方法について簡単に説明しておきます。
- まず、銅版やその他のものに彫られた文様に絵の具をぬる。
- この上に雁皮紙(和紙の一種で、手紙などに使用される)をのせ、文様を写し取る。・・・図-1
- 写し取った文様を、細工する皿、壺などに絵の具を塗っておいて、そこに転写する。
- その転写された皿などを、やに台をバ-ナ-であぶって少し軟らかくし、文様を面にして裏面をひっつける。・・・図-2
- やに台に固定された皿などを鏨(たがね)などにより彫金していく。・・・図-3

図-1

図-2

図-3
これ以外の方法としてのやにを使う彫金としては、例えば棗(なつめ)や壺などの場合には内部にやにを温かい内に入れ、中のやにを一種のクッションにして表面を鏨(たがね)でたたき、文様を打ち出していきます。つまり、レリ-フなどの作品にはよく使われます。文様を彫り終わったら、中のやにをとかして出し、その後は良くカセイソ-ダで洗浄してやにを良く取ります。
参考図書
- 金工の伝統技法(理工学社) 香取 正彦著他
- 彫金の技法(雄山閣) 小川 千恵子著
- 彫金(主婦と生活社) 望月 正子著
- 彫金・モダンジュウリ-入門(マコ-社) 菱田 安彦著
- 日本大百科辞典(小学館)
- 百職百人 東京の職人(淡交社) 清澤 一人著
彫金関係のホ-ムペ-ジ
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