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高密度実装に対応した導電性銀ペーストを開発

ニュースリリース 2000年10月26日発表

高密度実装に対応した導電性銀ペーストを開発ナノ粒子利用により超微細領域への適用が可能に

ハリマ化成株式会社(本社、兵庫県加古川市野口町水足671-4、長谷川吉弘 社長)と株式会社アルバック・コーポレートセンター(本社、東京都中央区京橋1-11-22、中村久三 社長)は、このほど高密度実装で要求される微細パターン形成に適した導電性銀ペースト(ナノ粒子*1)ペースト)の製品化技術を共同開発いたしましたので、発表させていただきます。
本技術は一般市販の導電性ペースト粒子サイズの約1/500という銀ナノ粒子の特性を維持しつつ、その銀ナノ粒子の表面状態を化学的に制御することにより導電性を持たせることに成功したものです。今回共同開発したナノ粒子ペーストは、今後多様化する実装技術に新たなソリューションをもたらすものと期待しております。

【背景】
急速に進む携帯電話やノートパソコンなどの情報機器は小型化・高機能化が求められています。一方、そこに使用される各種材料の環境対応の動きも話題になっています。これらの理由から、今、導電性ペーストへの関心が高まりつつあります。
導電性ペーストの微細印刷性は、導通を得るために配合している金属粒子の大きさに依存しています。通常の導電性ペーストではライン/スペース=50/50μm(マイクロメータ)前後が限界となります。これは、一般に使用される銀や銅などの導電性材料の粒子径が数ミクロンオーダーと大きいためです。つまり、粒子を細かくしない限り微細印刷性を高めることはできません。
また、このような導電ペーストは金属粒子間の接触性により導通性能が左右されることが知られています。
すなわち、きわめて微細な金属粒子を均一分散した導電性ペーストが開発できれば、あたかも均一な液体のようにハンドリングでき、スクリーン方式による微細印刷だけでなく、ディスペンサー*2)を用いた微小構造面への塗布等、従来の導電性ペーストでは無理とされていた三次元実装領域への適用が可能となります。

【新技術の内容】
微細印刷性を得るための銀ナノ粒子として、ERATO*3)での研究成果をもとに開発された独立分散ナノ粒子*4)を使用しました。一般的に金属ナノ粒子は、表面活性が高いために室温で粒子同士が溶け合い、数十個~数百個の凝集体を形成します。
一方、独立分散ナノ粒子では凝集することなく有機溶剤中に安定な形で存在させることができます。これをもとに導電性ペーストを構成することで、微細印刷性が向上することが期待できます。
しかし、独立分散ナノ粒子の表面には、特殊な分散剤があるために、これが熱硬化後の導電性と密着性の障害となっていました。表面に分散剤のない銀ナノ粒子は100℃程度の低温で溶け合うことが知られています。したがって、独立分散ナノ粒子の分散安定性と低温で溶け合う性質とを融合させることが技術的ポイントとなります。今回開発した技術では、独立分散銀ナノ粒子を熱硬化性樹脂中に均一分散したペースト組成物をつくり、ナノ粒子表面の分散剤を加熱時に化学反応で除去するプロセスを確立しました。これにより、ライン/スペース=25/25μmでの安定した印刷と良好な導通性の両立が可能となりました。実使用においては、粒状感のない優れた印刷性、ディスペンス性を有しています。また、従来の導電ペーストでは、薄膜形成をしようとすると膜厚方向での粒子数が不足するために、安定した導通性が得られにくいという問題がありました。独立分散銀ナノ粒子の利用はこの問題を本質的に解決するもので、微細印刷における平面および高さ方向での電気的信頼性を飛躍的に高めることができます。これには、ナノ粒子間の溶融による導通が、大きな役割を果たしています。
さらに、ナノ粒子ペーストのもうひとつの特長として、低粘度化が可能であることが挙げられます。低粘度により複雑な形状への追従性が良いことから、一般的には困難とされる微小な有底ビアホール*5)への充填も可能となります。このようなナノ粒子の特性から、用途として、プリント配線板における回路パターンの形成、各種ビアホールの導体形成、微細部品の接合等、従来分野でのファインピッチ化への対応はもとより、シリコンレベルでの回路形成にも幅広く応用できます。

【今後の計画】
両社では引き続き硬化温度や金属種を変えたナノ粒子ペーストの開発を行い、高密度実装における鉛フリー化やファインピッチ化に対応できる製品群の開発を進めてまいります。また並行して、お客様へのナノ粒子ペーストのサンプルのご提供を計画しております。

(注)
*1) ナノ粒子     :粒子径が100ナノメーター以下の微細粒子(ナノメーター 10-9メーター)
*2)ディスペンサー :注射筒(シリンジ)と注射針(ニードル)からなり、シリンジ内に充填したペーストを空気圧によりニードル先端から押し出して塗布する装置。XYステージにより、任意の場所に任意の量を塗布することができる。
*3) ERATO :Exploratory Research for Advanced Technologyの略、新技術事業団による1981年に発足した創造科学技術推進事業
*4)独立分散ナノ粒子:凝集することなく孤立状態で溶液中に分散しているナノ粒子
*5)ビアーホール  :多層基板プリント配線板において、積層する上下の配線間の導通をとるため垂直方向に開けられた孔。プリント配線板の上下を貫通するものも含む。各近年では各配線層に設けられた数10~数100μm径の微細な孔に導電ペーストを充填し、これを積層後に熱処理することで上下導通を得ることもある。

本件に関するお問合せ先:ハリマ化成株式会社 筑波研究所
所長松葉 頼重 (まつば よりしげ)
住所:茨城県つくば市東光台5-9-3
TEL: 0298-47-5080 FAX: 0298-47-5081