ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

松葉堆肥でつくる、おいしく良質な野菜

従来、堆肥には適さないとされてきた松葉。
その松葉を使った堆肥で、
田口則男さんはキュウリづくりに勤しむ。

農業・田口則男さん

きっかけは松林の保護

 一口かじって、ちょっと驚いた。キュウリって、こんなに甘かったっけ、と。

日和がいいと葉や花から水滴が溢れるほど、みずみずしいキュウリが育つ。

 ビニールハウスの中で、もぎたてのキュウリをかじったのだから、新鮮であることは間違いない。けれども、普段口にしているキュウリとは味が違う。いったい何が違うのか。

 実はこのキュウリ、松葉を使った堆肥で育てられたものである。生産者は、和歌山県美浜町で農業を営む田口則男さん。田口さんが松葉でつくった堆肥を使うようになった理由を知るには、美浜町の煙樹ヶ浜松林について触れなければならない。

 和歌山県の西部、和歌山湾に面する美浜町には、幅が最大500メートル、長さ約4.5キロに及ぶ近畿最大規模の松林、煙樹ヶ浜松林がある。徳川時代の初期から保護されてきたこの松林は「21世紀に引き継ぎたい日本の名松百選」にも選ばれた景勝地で、美しい景観となっているだけでなく、美浜町を潮害や風害から守る役割を果たしている。

 かつてはこの松林の落ち葉を住民が拾い集め、かまどや風呂の焚きつけなどに広く利用していたという。しかし、生活様式の変化によって焚きつけに利用されなくなると、落ち葉が松林に堆積したままの状態になってしまった。落ち葉が堆積すると、林の生育に悪い影響を与える。

 そこで、美浜町では2006年から枯れた松葉を集め、堆肥として活用する取り組みを始めた。2009年には、その取り組みに参加する農家が「煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会」を設立。田口さんは現在、その会長を務めている。松葉堆肥を使った作物として最初に選んだのは、美浜町の特産品であるキュウリだった。

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