ハリマ化成グループ

One Hour Interview

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100%を超える価値の創造を目指して

波多野 学

メタルフリーの有機触媒を開発

研究室のホームページを拝見すると「触媒反応を駆使した精密有機合成法に基づき、生命現象を解明するための機能性物質や工業的に付加価値の高い光学活性化合物を創製し(後略)」という記述があります。触媒と生命現象がつながるのですか。

 触媒反応がダイレクトに生命現象を司る反応を制御している場合もありますし、触媒反応を使って生物活性物質をつくり、その薬理活性を調べる間接的なつながり方もあります。

これまでの研究で、ご自身でこれは誇れるという実績を挙げるとしたら何がありますか。

 そうですね、エステル合成で言えば、極めてシンプルなメタルフリーのアンモニウム塩触媒を開発したことでしょうか。これは従来の金属塩触媒とは一線を画す革新的なエステル合成用触媒で、取り扱いが容易で回収や再利用もできます。それでいて高い反応再現性を示すうえにスケールアップにも対応できます。従来法に比べると適用可能な溶媒の種類や合成可能なエステルの種類が多いことも特徴で、GSCに合致した安全で利便性の高い「環境調和型エステル合成法」と言えると思います。やっとできたかなと。ものすごく時間がかかりましたけどね。

何がきっかけで始められたのですか。

 名古屋大学に着任したのが2003年で、すべての研究課題を通じて、いろいろな意味で生体酵素を凌駕するような触媒づくりに挑んできました。名古屋大学では石原一彰先生の研究室に所属していましたが、生物機能工学分野に置かれており、周囲にあるのはニワトリやマウスを用いる遺伝子工学、タンパク質工学、抗体工学、細胞工学などを扱う研究室ばかりでした。それに影響されたわけではありませんが、「生体反応に近い反応で有機合成ができないか」と考えるようになり、一念発起して始めることにしたんです。でも最初の5年くらいは、まったくうまくいきませんでした。

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