ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

微生物の「会話」をひもといてメタンを生成

前田憲成

研究者に必要なのは忍耐力

技術的な課題はありますか。

 促進菌を大量に投与しても、自然淘汰が起きてなかなか効率が上がらないことですね。単一系なら促進菌を培養して増やすことは容易なのですが、複雑系だと菌同士が反応し合い、促進菌だけを増やして生きさせるのが難しいのです。

実験ベンチを使い培地を分注する学生たち

先生の研究室のホームページに、地球上に存在する細菌の数は星の数より多いという記述がありますが、本当ですか。

 確か10の8乗か9乗くらいいるはずですから、星より多いはずですよ。でもまだ発見されて登録され、培養できている菌の数は数万種程度にすぎません。

先生も新種の菌を見つけたことはあるのですか。

 火薬分解菌を見つけて、「TM15株」と名付けました。Tは憲成、Mは前田の頭文字です。

星と同じで、発見者が名前を付けることができるのですね。こういう微生物工学の研究者にはどういう資質が必要ですか。

 忍耐力でしょう。わけのわからない結果が出ることはしょっちゅうで、本当に思うようにならない。でも、そこが面白さでもあります。

研究者としての今後の夢、目標は?

 狙って獲れるものではないでしょうが、あわよくばノーベル賞を獲りたいですね(笑)。火薬の無害化の後は、微生物を使って海水からメタンをつくり出す研究をしたことがありました。これもいけると思ったのですが、ダメでした。諦めずに忍耐強くやっていきます。

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻 環境共生工学講座 微生物工学分野 教授 前田憲成[まえだ・としなり] 1978年、福岡県生まれ。九州工業大学工学部物質工学科卒業。同大学大学院生命体工学研究科生体機能専攻博士前期課程・博士後期課程修了、博士(工学)。2006年4月から翌年9月まで、米テキサスA&M大学工学部化学工学科で博士研究員。九州工業大学大学院生命体工学研究科助教、准教授を経て2021年11月より現職。野球やサッカーの観戦が趣味。音楽ではB’zのファン。九州工業大学以外に高専や看護学校などでも授業を持っており、「土曜日はくたくたでほぼ寝ている」という。

[第36回 松籟科学技術振興財団研究助成受賞]

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