01.バイオリンと松脂(ロジン)
松脂(ロジン)が生み出す美しい音色・音質の秘密
松脂(ロジン)は現在私たちの生活に欠かすことの出来ない大切な素材で 広くいろいろな分野で使用されていることはご承知のことと思います。しかし、以外に知られていないが、非常に大切な働きをしており、 私たちの身近で欠かすことの出来ない、松脂(ロジン)を使用した商品についてシリ-ズで紹介していきます。
第一回目は、バイオリン、ビオラ、チェロ等の弦楽器の弓に使うことにより、 大切な働きをしている謎に迫ります。ベ-ト-ベン、ブラ-ムス、パガニ-ニ等々・・・オ-ケストラの奏でる バイオリン協奏曲は私たちを得も言われぬ優美な世界へと導いて行ってくれます。弓と弦とで奏でる別世界---ここでも松脂(ロジン)が大切な働きをしており、 もしこれがないと音がでないばかりか、 出たとしてもとても私たちの心を打つような音色にはなりません。
取材協力
株式会社アルシェ
東京都文京区小石川2-1-11
TEL:03-3814-8670
会社名のアルシェはフランス語のArchet(弓と言う意味)からとっております。
バイオリン、ビオラ、チェロ、そして音色を出すための松脂を製造しています。
弓の制作/弓の材質
木を削る、反りを入れる、ニスをぬる・・・良い弓を作るためには何 と108の工程が必要で、一つ一つ の工程に職人さんの細かい神経と優 しい気持ちが込められています。

(株)アルシェのバイオリン
弓や楽器はすべて天然、自然の材料が使われており、美しい音色を奏でるためには素材の厳選が必要です。美しい音色は自然が与えてくれた恩恵とも言えるのではないでしょうか。
スチック(弓の毛を張る部分)
ブラジル産のフエルナンブ-コ(パウブラジルと言われる染料を取る堅くて艶のある木材)や黒檀(スリランカ産)が多く用いられています。
弓毛
一般的には馬の尻尾の毛が使われます。バイオリンの弓は75cm 位の長さが必要なため、長い馬の尻尾の毛が使われます。
毛箱(貝スライドと言われる)
ここにも自然の素材であるアコヤ貝を螺鈿にして張り付けています。また素材に鼈甲を使用していることもあります。ここは装飾効果を持たせるためです。
バイオリンの胴体の表部分には松が素材として使われています。この素材の松は南スイスとチロルの山間の南斜面に生育するものが良いとのことです。
・・・松に縁の深いものがあります。
音の出る仕組み
弦(昔は羊の腸を使っていたが、現在はスチ-ルやナイロンが多い)を弓でこすると何故音が出るのでしょうか。
弓に使われる馬の尻尾の毛には目に見えないほどの細かいけばだち(突起)があり、更にそれを精製して無数の突起物を作っています。

良い弓毛の表面
弓毛の表面繊維質が均一で波状である。
(写真提供:(株)アルシェ)
この突起物に松脂(ロジン)をぬることにより、摩擦力を強めています。それでは何故弓で連続的に圧力をかけても、音が出るのでしょうか?
それは、松脂(ロジン)のおかげで、音が中断されるからなのです。弓に松脂(ロジン)が付いていなければ、弓が弦に触れたり、擦ったりしている限り、指で弦を触るのと同じように振動が出来なくなるのです。
馬の毛のなめらかな表面がわずかな微粒子の松脂(ロジン)によってザラザラになると、弓は切れ目なく続く圧力で弦に触れるのではなくなります。つまり、松脂(ロジン)の存在によって、弦はごくわずかな断続的な一定の振動を受けることになるのです。その振動が、あまりに速いので、その音が連続的に聞こえるようになるわけです。

電子顕微鏡:400倍
弓毛に松脂(ロジン)をぬった写真
(写真提供:(株)アルシェ)
粒子が均一にまんべんなくついている。
美しい音色・音質を生む秘密・・・松脂(ロジン)
松脂(ロジン)を弓毛にぬる目的は「弦の滑りをよくするため」とか「弓毛の表面を滑らかにする」と思っている人もあるとは思いますが、実際にはその逆で「ざらざら」にするためなのです。そのために要求される松脂の品質としては…
- 粒子が均一であること(小さい方がよい)。
- 全体的にまんべんなく付くこと。
- 粘度は高すぎず、サラサラしすぎていないもの。
ということが要求されるので、松脂(ロジン)の素材を厳選し、製造技術の高さが必要になります。

バイオリン用の松脂(ロジン)


南西フランス (ミミザン)
昔は使用する松脂(ロジン)は南西フランスの海岸地域(ミミザン地方)で手で採取したものが最良とされてきましたが、現在では中国産のガムロジンが使われています。
余談になりますが、中国の生松脂は馬尾松(ばびしょう)と呼ばれる松から採取されています。
弓毛(馬の尻尾の毛)と馬尾松・・・何やら、因縁深いですね。
松脂(ロジン)の使用上の注意・・・良い音色を出すために。
- 弓毛を張り替えたとき以外は、松脂(ロジン)の種類は変えないこと。弓毛を張り替えるまでは一種類の松脂(ロジン)を使うこと。
- 松脂(ロジン)の使いすぎは良くない。 音が悪くなり、粗雑になる。
- 松脂(ロジン)の塗りむらがないようにすること。 音のかすれなどの原因になる。

バイオリンの弓に松脂(ロジン)
を塗っているところ

バイオリンの演奏

