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06.蝋型鋳金と松脂(ロジン)

画像 蝋型鋳金原型の写真
松脂と蜜蝋で作られた蝋型鋳金の原型

取材協力

あらい工房美咲
山形県上山市美咲町1丁目12-36
代表:荒井文子 TEL:023-672-4118

あらい工房美咲は山形新幹線かみのやま温泉駅から徒歩5分の住宅地にあり、蔵王連山を眺められる風光明媚なところです。
上山市は大名最上氏の出城があったところで、歌人齋藤茂吉の生誕の地としても知られています。駅前には茂吉の処女歌集「赤光」の句碑が建っています。

荒井さんはここで蝋型鋳金を始めて20年、彼女の作る蝋型鋳金(ろうがたちゅうきん)は見事なまでの出来映えで、鋳金の技術の紹介や教室の講師など多忙とのことです。

画像 山形県上山市付近の地図

画像 JRかみのやま温泉駅の写真
JRかみのやま温泉駅

蝋型鋳金とは

蝋型鋳金の歴史

古代オリエントにおいて、紀元前六千年頃から銅器文化が起こり、紀元前四~五千年にはエジプトにも銅器文化が起こった。
中国では紀元前一千六百年~一千年頃の殷・商の時代に青銅器文化が栄えている。日本では紀元二~三百年のころに銅剣、銅矛、銅鐸、銅鏡などの制作に使われたが、石製の鋳型を用いる方法で蝋型鋳金とは異なっていた。
飛鳥時代に入り、百済から仏教が渡来するようになってから、銅型鋳型が多く作られるようになり、更に奈良時代に入ると佛教関係の鋳造が多くなってきた。それに伴い、蝋型鋳金の技法も開始されるようになった。この時代の代表的な蝋型としては、鶴林寺の聖観音(兵庫)、薬師寺の薬師三尊(奈良)などがあげられる。

金属材料

材料は銅と錫の合金が大半であり、それ以外に鉛、ニッケル、亜鉛などが使用されている。現在の青銅といっているものは錫、銅、鉛の合金で、一般的な配合は、銅に錫を5~10%、亜鉛を0~4%配合したもの。
その配合割合により唐銅(Cu,Sn,Pb,Znで赤銅色)、朧銀(Cu,Pb,Zn,Agで青白い黒色)、黄銅(Cu,Zn,Pbで黄色)、赤銅(Cu,Pb,Zn,Ag,Au,Asで黒色)などがある。
加える錫の量によって、赤色から黄色、白色、純白色へと変化する。古墳から出てくる銅剣は銅83%、錫9%、鉛8%、銀は痕跡との分析結果もあり、銅鉾は銅77%、錫14%、鉛1%、アンチモン5%、鉄は痕跡、ニッケルは3%との分析結果もある。

蝋型鋳金とは

鋳造方法はその技法により次のように分類されている。
1.蝋型 2.込め型 3.挽き型 4.ガス型 5.石こうロストワックス法 6.遠心鋳造7.金型鋳造
一品一作の蝋型鋳金は蝋そのものを加工し、出来上がった蝋製品の全体を型材でくるみ、外部から熱を加えて中の蝋製品を溶かし気化させ、蝋製品と同一の空洞化させた型の中に、溶融化させた金属を流し込み、型と金属が冷却したところで型を壊し、中に出来た金属製品を取り出します。
一品一作ですので、蝋型鋳金の製品は同じものがありません。蝋型の原型は一回限りの使用ですので、デザイナーの個性が遺憾なく発揮されるとともに、細部にわたり忠実に作品を再現してくれます。
基本的には蜜蝋と松脂を煮合わせたもので造形して、原型にバインダー液とアルミナの粉末を混ぜた液を作り、砂を幾層にも吹き付ける。これを乾燥して焼いて型を作る。
熱で蝋が溶けて出来た隙間に銅合金を流し込むと、造形した原型そのままの作品が出来る。この方法は香炉、置物、花瓶、文鎮などによく用いられ、国指定の伝統的手法となっているところもある。蜜蝋と松脂の混合比率は使用目的、使用場所などによっても異なりますが、大体4:6~5:5~6:4の割合です。
この鋳型法は、蝋の味が生きた鋳肌が特長で、原型の繊細な部分までそのままに再現され、着色はおはぐろ色、煮色、青銅色など伝統的な方法で行われています。伝統的な着色法としては、酒石酸、硝酸、硫酸などの酸類と食塩、塩化アンモニウムなどの混合液に浸けることにより行われます。

蝋型鋳金の蝋の調整法

鍋を火にかけて、松脂から溶かします。松脂が溶けたら不純物を金網ですくい取り、蜜蝋を入れます。蜜蝋が溶けて松脂と混じり合ったら、少し温度を低くして布の袋などで漉します。水またはぬるま湯の中へ流し込み凝固させます。その後、凝固した蝋を手でもみ、蝋のもろさがなくなって粘りが出て、色が赤みを帯びた鮮黄色になるまで練ります。蝋は適当なブロックにして保存し、使用するときにぬるま湯の中で温めて軟らかくして手でちぎり、粘土細工の要領で造形します。

画像 蝋型鋳金の蝋の調整風景の写真1画像 蝋型鋳金の蝋の調整風景の写真2
出来た蝋をぬるま湯で温め、造形します。

蝋型鋳金の鋳造工程

原型→湯口(鋳口)取り付け→土を付けて塗り込め→乾燥→焼成窯→蝋を溶かし出す→溶解した金属をそそぎ込む→冷却→型こわし→表面磨き→製品

画像 蝋型鋳金の鋳造工程の写真1
湯口取り付け

画像 蝋型鋳金の鋳造工程の写真2
土で固める

画像 蝋型鋳金の鋳造工程の写真3
蝋を溶かしだしたところ

荒井さんの工房にて

荒井さんは上山で蝋型鋳金の工房を開いて20年。なかなか思い通りの作品が出来ませんとおっしゃるが、工房においてある作品は見事という以外にない。蝋型鋳金の原型は頭の中でデッサンを描き、図面などは特に作らないとのことです。
山を見てもなにを見ても自分の作品に当てはめてイメージするようにし、原型は手間暇の固まりみたいなものと話してくれました。蝋型鋳金のテーマは自然と心をコンセプトとしており、使ってくださる人の気持ちになり、作品により気持ちがホットしたり、暖かく感じられるような作品を作りたいと考えているそうです。
蝋型鋳金に欠かせないものの一つとして松脂がありますが、基本的には松脂と蜜蝋を適当な配合で蝋型鋳金の原型と呼ばれるものを作りますが、荒井さんによれば松脂の配合は作品によっても変えるし、温度によっても変えているとのことです。松脂をいれるわけは一つにはその粘着性であり、松脂によって蝋型鋳金の原型の緻密さが保たれているといっても過言ではありません。松脂が入っていないと蝋はボソボソになり、コシがでません。松脂が入ることにより、緻密な細工が可能となる。複雑な蝋型鋳金の原型は、原型を作りその上から少しずつ個々の部品を付けていきます。自然の質感をだすためには松脂が欠かせないとのこと。
荒井さんの自慢の作品は右の器で、とても金属で出来ているとは思われない温もりを感じさせます。

画像 荒井さんの代表作品の写真1

画像 荒井さんの代表作品の写真2
荒井さんの代表作品

画像 荒井さんの作業風景の写真1画像 荒井さんの作業風景の写真2画像 荒井さんの作業風景の動画
模様はこてを用いて蝋を少しずつ溶かしていき、微妙な表現を付けていきます。

画像 荒井さんの作品写真1画像 荒井さんの作品写真2画像 荒井さんの作品写真3
荒井さんの作品:かぶと虫の作品は特に気に入っていますとのこと。

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