ハリマ化成グループ

パインケミカル

松やに(ロジン)を訪ねて

08.朱肉と松脂(ロジン)

何千年という時間の中に、朱は鮮やかさを失うことなく今に甦える。
画像 印字のサンプル
取材協力

株式会社木下照僊堂(きのした しょうせんどう)
〒630-8326 奈良市瓦堂町8番地
TEL:0742-22-2248 FAX:0742-22-6158

株式会社木下照僊堂は、朱肉、朱墨の使用が一般にも許された(元来朱の使用は寺社仏閣や高貴な人のみ使用が許されていた)明治五年に創業した朱専門に製造販売する老舗です。 朱肉も朱墨も暑さを嫌うので、製造は冬の極寒に手作りで行われます。 伝統工芸の灯を消すことなく、130余年製造販売を行っています。

画像 木下照僊堂の写真
画像 奈良県の地図
朱の歴史
  1. 朱は古代から、幸福招来のめでたい色、高貴な色として尊ばれ、魔よけの守護色ともいわれています。そして、暮らしの中に欠かせないのが、朱を使った朱肉です。また、朱雀(すじゃく:南の方角)、朱印、朱夏(暑い夏)、朱門の家等というように朱がつく言葉も多くありますが、めでたい、高貴なといった意味を含んでいます。
  2. 朱という言葉は赤土という意味からきており、赤は犬(人の正面形)に火を加えて修祓(しゅうばつ)する意で、これによって罪が赦されるので、朱は赤や丹と同じく神聖な色とされた。
  3. 古代エジプトでは、王家の印として、神像や神々、王の名称、繁栄や祈りを表すヒエログリス(神聖文字)が刻まれたスカラベ型印章が多数残されており、天然の辰砂を顔料として用いていた。
  4. 中国では印肉(朱肉)のことを、印色または印泥とよんでおり、朱は黄金とともに不老不死の霊物といって尊重されていた。六朝時代(318〜578年)には朱肉や黒肉が使われています。
  5. 日本では、石器時代の縄文式土器や弥生式土器にその朱彩文を見ることができるが、それには酸化鉄の丹ばかりでなく、明らかに天然朱を用いたと推察されるものがある。また、32面の三角縁神獣鏡が出土した黒塚古墳(奈良県天理市)の石室北側の漆膜は朱でサンドイッチ状に挟まれていたことも分かっており、朱が防腐効果とともに悪魔を追い払う目的で使用されたのではないかと想像されている。
  6. 印肉はこの朱とよもぎとひまし油を主として、これに二、三の薬味を混合して製する。しかし、この方法はまだ新しく、中国の宋代(960〜1126)に始まって鎌倉初期にわが国に伝来されたと言われている。それ以前は、朱を膠または糊状のもので練った物を印面に叩いて付け、以て押捺したのである。日本の推古天皇時代には朱が用いられ、貴族社会では中国と同じく金銀についで重宝されていました。

邪馬台国で有名な魏志倭人伝・東夷伝にも、当時の日本で朱・丹を産したと思われる記事がある。

画像 参考文献の写真1
後漢書
画像 参考文献の写真2
東夷傳第七十五
画像 参考文献の写真3
魏志倭人伝の一部
辰砂(しんしゃ)、丹砂(たんさ)

天然に産する朱は辰砂(しんしゃ)または丹砂(たんさ)と呼ばれる水銀と硫黄の化合物で、硫化第二水銀といわれるものです。古くは中国の辰州から取れたのでこの名が付けられている。朱砂、丹朱等とも呼ばれる。
現在では、天然の朱は産出量が少ないので、水銀と硫黄から合成しており、銀朱(ぎんしゅ)といわれている。銀朱は水銀の化合物ですが、ほとんど害はなく、純粋なものほど重たく、火や水にも強く、いつまでも変色しないため、重要書類、落款などに用いられています。朱肉は、これに繊維質のものと木ロウや松脂をひまし油等の油と混合して作ります。

印泥の付け方
  1. まず印を付ける前に、へらで印泥をまんべんなく押さえてみて、油が浮いていれば軽く混ぜる。
  2. 印面をきれいに掃除すること。柔らかいテイシュやガーゼなどで根気よく拭う。簡単に取れない場合は油を浸し、この上で何度か繰り返し印を軽くたたくようにすると、古く固まっていた印泥のかすやゴミが取り除かれてきれいになる。
  3. 印面を一度に強く押しつけないこと。印面を軽くたたきつけるようにして、数回繰り返す。印面に光を反射させてみれば、印泥のつきにムラがなければ全体的に光って見える。
  4. 印泥が柔らかすぎて多く付きすぎる場合には、冷蔵庫で少し冷やすと固くなる。反対に固すぎてあまり付かない場合は、少し暖めると柔らかくなる。火気は厳禁。

筆陣独掃左右軍(諸葛孔明:出師ノ表より)

画像 印泥の付け方を解説する写真1
へらで押さえる
画像 印泥の付け方を解説する写真2
印鑑に朱肉を付ける
画像 印泥の付け方を解説する写真3
和紙に押印