ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

今こそ100年先を見据えた教育ビジョンの真剣な議論を!

教育は国家100年の計。
ドクターが正当に評価されない今の日本では、若手研究者が育たない。このままでは日本の凋落は避けられない。
米国も含めて40数年に及ぶ研究者生活を送ってきた村上正紀氏は、日本の現状に強い危機感を持って警鐘を鳴らす。
今こそグローバルな視点で教育を議論しなければならない。

Masanori Murakami

村上正紀

学校法人立命館 副総長/教授 工学博士

45年前と変わらないドクターの就職難

 1971年、私は京都大学の大学院で博士号を取得するとすぐに渡米し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でポスドク(博士研究員)の職を得ました。

 日本では材料内の元素の動きについて研究をしていましたが、答えが必ず存在する研究でした。そんなことをしていて何のためになるのか――。常にそう思っていました。今、

 思えば若いときにありがちな生意気な考え方でした。米国の大学は、答えが存在しないかも知れないテーマの研究の宝庫に見え、米国の大学に魅力を感じていたのは事実です。

 ただ、米国に行った理由はそれだけではありません。実は当時からすでに日本ではドクターの就職難でした。けれども米国の大学でドクターを取得するのは非常に難しいと先輩から聞かされていたために、日本でドクターを取得してから米国に行こうと考えていたのです。

 もう45年ほども前のことですが、ドクターの就職難の状況は今も変わっていません。むしろもっとひどくなっているのではないでしょうか。特に人文社会学系ではドクターになりながらアルバイトや非正規社員として働いている若い人がたくさんいます。そうした先輩たちを見ていれば、学部学生もドクターになることに魅力を感じなくなってしまうでしょう。

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