ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

たとえ基礎的な研究でも出口を見据えた構想力を

時任静士

印刷で電子デバイスをつくる

 プリンテッド・エレクトロニクスとは、一言で言えば次世代のものづくりです。従来のエレクトロニクスデバイスは、シリコンをベースにしたボードの上にチップを実装した硬くて重いものでした。それを印刷でつくるようにすれば、軽くて薄くて柔らかいデバイスができるようになります。フレキシブルな有機ELディスプレーや電子ペーパー、あるいはフレキシブルなサーキットやメモリーもできるでしょう。私たちはその中で特にバイオセンサーに力を入れています。例えば絆創膏のように体に貼り付けて、ホルモンとかタンパク質といった生理活性物質をセンシングし、データを無線で送信する。そうすれば体に負荷を与えずに24時間、健康状態とかストレス状態を知ることができるようになります。日本の国家財政では介護医療費がどんどん膨張しています。一方で長寿化とともに寝たきりの高齢者も増えている。バイオセンサーで健康状態を常に把握しておけば、病気や認知症の予防ができるようになり、健康寿命を延ばして介護医療費の低減につながる可能性もあります。

 私は15年くらい前から、将来は印刷でつくる技術がエレクトロニクスのキーになるだろうと考えていました。材料から製造装置、デバイス、アプリケーションまでのサプライチェーンが国内で完結している日本は、この分野で優位性を持っています。プリンテッド・エレクトロニクスの研究は、日本の復権にも関わる重要なものだと思います。

 ただ新しい分野なので、まだ確立されていないことが多いのも事実です。特にキーとなるのは、ハリマ化成もつくっている銀ナノペーストのような、印刷に使える材料です。低温で塗って絶縁性を保てる絶縁材料もなかなかいいものがありません。企業との共同研究をこれからもっと強化していく必要があります。

次のページ: 基礎から応用まで幅広くカバー

1 2 3 4 5