ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

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教養とセンスを磨かなければいい研究はできません

藤嶋昭

本多・藤嶋効果の発見

 私がこの光触媒の元となる本多・藤嶋効果を発見したのは、もう50年以上前の1967年のことでした。シリコン半導体の利用が世界中で始まっていた時代のことで、米国やドイツの研究者はシリコンを水の中に入れて光を照射する実験を盛んにしていました。そうするとシリコンが溶けてしまうという論文を読んだ私は、その追試をすることにしました。シリコンやゲルマニウムから始めて、いろいろ試し、溶けないものはないかと探索しました。

 当時、私は大学院生として六本木にあった東京大学の生産技術研究所にいたのですが、あるとき隣りの研究室にいた先輩から「酸化チタンは試してみたか」と聞かれました。その方は酸化チタンの研究をしていたのです。

 いろいろな論文を読んでみても、酸化チタンを試してみた研究者はまだいないようでした。ただ酸化チタンの単結晶は高価なので、簡単には手に入りません。そのとき神戸にあったベンチャーが酸化チタンの結晶をつくっていることを知り、手紙を書いてお頼みすると、幸いにも分けていただくことができました。

 早速、実験です。いただいた酸化チタンをダイヤモンドカッターで小さく切り、それを電極にして水中に入れ光を当ててみました。するとそこからブクブクと泡が出てくるではも酸化チタンは溶融していません。ということは、水が分解されているのに違いありません。実際、分析すると、出てきたガスは酸素でした。

 私はこの現象を目の当たりにして感動しました。

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