ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

若さゆえの荒々しさがほしい

木野邦器

企業―大学間の人材流動化

2003年頃研究室にて

 そうした民間企業とアカデミアならびに科学技術戦略を提案する国のシンクタンクでの経験を踏まえて、私は常々、企業と大学間での人材の流動化がもっとあるべきだと話しています。現状では、人材の流動化はあまり活発ではありません。企業との共同研究において、単に研究費を支援していただくだけでなく、研究を介した人の交流の重要性を感じています。協和醱酵工業と共同研究を行ったときに、社員である若手研究者を1年間、私の研究室に派遣していただきました。学生から見たら私よりずっと若い社員は兄貴分のような存在で、コミュニケーションも取りやすかったと思います。優秀な方だったので学生の研究能力もずいぶん向上し、多くの成果を創出することができました。また、派遣された若手社員からも、自由な雰囲気で学生時代とは違った立場で学ぶところが多かったと聞いています。学生もそうですが、大学の研究者は外に出て多くの経験を積むべきであり、企業の研究者はアカデミアの世界にもっと入り込むことが人材育成や研究推進において効果的だと感じています。秘密保持などの問題もあるでしょうが、日本の場合、企業にも大学にもいささか閉鎖的な部分があるのではないでしょうか。そういう面ではもっとオープンな欧米に見習うべきだと思います。

 私の研究室では企業との共同研究の打ち合わせに、担当する学生をなるべくパートナー企業のところに連れていって中間報告やディスカッションを行うようにしています。学内の慣れた雰囲気とは異なり、いつもとは違う会議室で高い専門性を持った多くの企業研究者のいる中で行うプレゼンや質疑応答は、学生にとって緊張しますが、とても刺激的です。そういう完全アウェーの環境でのミーティングは、学生たちの研究への動機づけや取り組みにも効果的だと感じています。

次のページ: こだわりを持ち、夢を追求する

1 2 3 4 5 6