ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

伝説のテクノロジー

色、形、光、音、リズムを駆使して花火大会を演出

宗家花火鍵屋15代目当主・天野安喜子さん

自然を活かした演出を

 実は天野さんが花火工場で修行をしたいと申し出たとき、修さんは反対した。火薬を扱う花火工場は危険だし、女性はご法度という古いしきたりが残る世界だったからだ。天野さんは父親の修さんを尊敬し、「父の言うことは絶対です」という。「花火師を目指したのではなく、父を目指してきました」とも。ところがこのときは母の力も借りて父を説得し、自分の意志を貫いた。

 その甲斐あって、天野さんは2年間の修行を終えると自分自身の成長を実感していた。

 「職人の大変さや、コミュニケーションの難しさなど、花火の製造法以外にもたくさんのことを学びました。教えてくれないのなら盗めばいいと考えるほど、技術や知識の習得に対して貪欲にもなりましたね」

 花火大会の演出は、主催者側と協議しながらプランを練っていく。全体の構成を決め、場面ごとのデザインをし、それに適した花火を工場に発注するのが大まかな流れだ。花火には、色、形、光、音、リズムという5つの要素がある。それらをすべて指定して発注する。同じ赤でも、工場によって微妙に色合いが異なる。そうしたことまですべて踏まえておかないと、狙い通りの演出はできない。天野さん自身は頭の中に打ち上げたときのイメージができあがっているが、主催者側に説明するためにパソコンで絵コンテも描く。

 大規模な花火大会だと、準備期間に半年近くを要することもある。大会が終わった瞬間、「来年はこういうことをしよう」とアイデアが浮かぶこともあるが、考えに考え抜いても全くプランが浮かんでこずに四苦八苦することもある。そういうとき、天野さんは自然の中に身を置くことがある。

 「たわわに実った稲穂を見れば幸せを感じますし、稲妻を見たときには自然の脅威が体に響きます。私は、自然から強い刺激を受けていると思います。だからいつも自然を活かした演出をしたいと考えているんです」

次のページ: 音源も自分で選択

1 2 3 4