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伝説のテクノロジー

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1100年前の駅舎を甦らせた保存・復原の技術

建築家 田原幸夫さん

復原と復元の違いとは

 プロジェクトではまず保存・復原の基本方針が決められた。その冒頭には「残存するオリジナルを最大限尊重し、保存に努める」とある。なぜこのようなことが書かれているのか。田原さんがこう説明する。

 「古いものを大切に保存しながら傷んだところを修復し、創建時の姿に戻すのが復原で、なくなった建造物をもう一度造り直すのは復元です。日本ではそこが混同されています。現代の材料で天守閣を再建し、あたかも歴史的建造物のように見せる行為などは、復元において最も問題となるところです」

 もちろん丸の内駅舎の場合は、復元ではなく復原である。戦災を受けながら残った主要な部分を修復しながら創建時の姿に戻したということだ。幸い、丸の内駅舎は創建当時の図面もある程度残っていたし、写真などの資料も膨大にあった。そのため外観に関してはほぼ100%、創建時の姿が分かったという。

 だが、内部は戦災でほとんど焼け、3階も一部を除いて失われていたので復原は無理と判断され、ステーションホテルやステーションギャラリーなども含めて新たに設計されることになった。そこは復原ではなく現代のデザインということになるが、もちろんこの場合も全体の印象を損なわないように細かいところまで配慮した設計が行われた。

特注の免震ゴムを開発して免震化を実現。

 ただし、創建当時のオリジナルの建物とまったく異なる新築の建物がある。機械室や駐車場などを設けるために地下1階と2階を増築した部分だ。しかも地下と地上部との間の高さ2メートル弱の空間に免震ゴムを設置し、建物全体を免震化したのである。

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