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伝説のテクノロジー

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世界一の音楽ホールをつくりたい

軽井沢大賀ホール 元相談役・支配人 大西泰輔さん

内装材には落葉松(カラマツ)を多用

 「私は実際にいろいろな位置の椅子に座って演奏会などを聴きましたが、どの席でも同じように音が聴こえます。しかもとてもクリアな音で、一つひとつの楽器の音がはっきり聴き分けられるほどです」

 と、大西さん。

 内装材に木を使ったのも大賀さんのこだわりだった。木は音の響きがいいし、自然な暖かみや優しさが感じられる。せっかく軽井沢の豊かな自然の中につくるのだから、木のぬくもりを生かそうというのが大賀さんの発想だった。

軽井沢大賀ホールは、JR、しなの鉄道の軽井沢駅から徒歩約7分。矢ケ崎公園内に位置している。

 「できるだけ地元の木を使おうということで、軽井沢に多い落葉松を使いました。しかも大賀さんは木にも性格があり、性格がバラバラだと音の響きもバラバラになってしまうから、同じ場所に生えている松を使うように指示しました。内装にここまでたくさんの松を使っているホールは、他にないかもしれません」

 檜の板でつくられたステージから上を見上げると、五角形の音響反射板が3つ、天井から吊り下げられている(表紙写真)。この反響板は上下に移動させることができる。ピアノやバイオリンのソロ演奏のときには、反響板を下げて客席に届く音のボリュームを大きくし、オーケストラなどの演奏時には反響板を上げて、ボリュームが大きくなりすぎないようにするのだ。

 「松の集成材をルーバー状に並べた壁は、木と木の間に柔らかい素材を挟んで雑音を吸収するようにしています。ただ、ステージの後ろの壁は客席に音を反響させる必要があるので、木と木の間に硬い素材を入れてあります。客席の椅子も座面の裏側に縦スリットの隙間をつくり、雑音を吸収できるようにしています」

 ちなみにこの椅子、一般的な音楽ホールで使われている椅子に比べると、幅がやや広めのサイズになっている。大賀さん自身、大柄だったので、せっかくいい音楽を聴きに来た客に、狭い椅子で窮屈な思いをさせたくなかったのだろう。

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