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伝説のテクノロジー

伝説のテクノロジー

日本独自の鍛造(たんぞう)技術で鉋(かんな)をつくる

鉋職人 魚住 徹さん

海外市場の開拓も

 14~15年前からは海外市場の開拓にも取り組んでいる。三木市と交渉して、市の工業会の企業が海外の展示会に出展するときは補助金が出るようにもなった。常三郎の場合、売り上げの30%ほどが海外だ。

鉋の刃の裏側に模様を付ける作業。

 「日本では鉋を手前に引いて削りますが、欧米では押して削ります。この文化の違いが最初は理解されませんでしたが、展示会などで実演することで少しずつ日本式の鉋が認知され始めています。海外のユーザーは70%が家具屋さんで、20%は楽器屋さんです」と語る魚住さんは3月にも1週間ほど、ドイツのケルンで開かれたハードウェアショウに三木市工業会の仲間とともに参加した。今年は8月にアトランタ、10月に台湾の展示会にも参加する計画だ。

 現在、常三郎でつくっているのは、大鉋、小鉋、特殊鉋、洋鉋刃、細工鉋、鰹節削り器など。オーダーメイドの特注にも応じるし、修理にも対応している。刃の長さが1尺(約30センチ)の特大鉋の製作をしたこともあるし、逆に9ミリのミニ鉋をつくったこともある。何を削るのかわからないような仕様の鉋を注文されることもある。刃に木目模様をつけてほしいという要望には、塩酸に浸ける技法で応えた。

 「工場をオープンにして、見学を受け入れています。このままではすたれてしまうので、とにかくこの鉋づくりを少しでも多くの人に知ってもらいたいのです」

 三木市は日本で最初の金物の町と言われる。5世紀の中頃、百済から来た韓鍛冶が三木に住み着いたのがその起源とされる。

 その歴史と伝統を守るため、魚住さんの奮闘は続く。

鉋の刃の裏側に模様をつける彫金を行った後、厚みを揃える野々村工場長。鉋の全工程から彫金、銘切りまでを担当する。

播州三木打ち刃物の鉋の完成。

うおずみ・とおる 1959年、兵庫県生まれ。大学卒業後、機械メーカーに就職。1989年、家業の常三郎に転じ、鉋づくりを始めた。趣味は料理。特にタコ焼きやお好み焼きなどの粉ものにはこだわりがある。常三郎の工場はかつて「水戸黄門」のロケで使われたこともある。

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