ハリマ化成グループ

伝説のテクノロジー

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マッチ型お香スティック

神戸マッチ代表取締役・嵯峨山真史さん

マッチの需要拡大はもう難しい

頭薬を作る練り釜。一度に約2万本分の頭薬を練ることができる。その日の天気や温度で水を入れるタイミングを調節していく。

頭薬をお香の頭に塗布していく。

 もちろん嵯峨山さんもそうした状況を危惧し、「そうなる前に」と手を尽くしてきた。2009年にはデザイン会社の提案を受け、昔の図柄を復刻させたレトロマッチを制作。マッチの図柄をデザインした雑貨も作り、印刷で培ったデザインノウハウを生かし、バスのラッピングにも参入した。「レトロマッチの売れ行きは決して悪くはありませんでした。でもマッチ工場の生産量が増加するような勢いにはならず、結局、マッチの需要拡大に見切りをつけざるを得ませんでした」

 では、どうするか。嵯峨山さんが得た結論は、自分たちのコア技術を生かすというものであった。「自分たちの一番のコア技術である着火技術に立ち返りました。いわゆる原点回帰です。そこでそれを使ったライフプロダクトを作ることにしました。ろうそくとか花火とかいくつか候補が上がりましたが、淡路島はお香の産地で、マッチとお香を合体させたら今までにない面白いものができるだろうと考えました」

 そこで嵯峨山さんが取引先の問屋に聞いたところ、紹介されたのが淡路島で線香やお香を作っている株式会社大発であった。

 嵯峨山さんはすぐに淡路島に向かった。「マッチのように擦っても折れないお香はできますか」 その問いに、大発側は最初「難しい」と答えた。だが大発は、和紙を入れた紙のお香を商品化しており、これが共同開発の糸口になる。「その技術を使えばできるかもしれない」

 こうして、同じ兵庫県内にあるマッチとお香という2つの伝統産業がタッグを組んで、新しい商品開発に挑むことになった。

 開発は実に約3年半を要した。その間に神戸マッチはマッチの軸を作る工場を閉め、リストラも行った。ただし、マッチの軸の先端につける頭薬の製造はやめなかった。頭薬の原材料は塩素酸カリウム、ガラス粉など約10種類。燃焼補助と硬化のために松ヤニも入れられている。

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