ハリマ化成グループ

One Hour Interview

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最難関天然物の合成に世界で初めて成功

2009年、東北大学の徳山英利教授は、
単離以来半世紀以上にわたって全合成されなかった最難関天然物のひとつであるハプロファイチンの全合成に世界で初めて成功した。
しかも独自に開発した画期的な反応を駆使してのこの成功は、世界的な権威とされる米国の大学教授らと競合した上での快挙である。
この技術がさらに発展すれば、従来は不可能とされていた新たな医薬品が開発できる可能性も開けてくる。

徳山英利

東北大学大学院
薬学研究科・医薬製造化学分野 教授

深刻な医薬リード化合物の枯渇

研究についてお聞きします。事前に読ませていただいた資料に「医薬リード化合物の枯渇が深刻だ」とありましたが、なぜ枯渇しているのでしょうか。

 調べられるものは、もうだいたい調べつくされてしまったからです。植物の有効成分を調べ始めたのは18世紀から19世紀のことで、そこからアスピリンなどが見つかったりしました。抗生物質であるペニシリンなど、菌が産生する二次代謝産物なども見つかりました。でも、主な植物や菌の培養液はほとんど調べつくされ、新しいものを見出すのが難しくなっています。

調べつくして、もう新しいものが見つからないのだとしたら、これからはどうすればいいのでしょう。

 いくつかの方法があると思います。ひとつは未開の地に分け入って、未知の植物から見つけるという方法。中南米やアジア、特に中国の南西部やタイなどで近年かなり調査が行われています。中国やタイの大学では、薬学分野の基礎研究の大部分がそのような研究です。

 もうひとつ、海産生物から探すという方法もあります。ホヤやカイメンおよびそれらの海産生物に寄生する菌が産生する化合物には、最近、世界的に関心が高まっています。

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