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One Hour Interview

One Hour Interview

超分子材料設計学により生体系を超える材料構築を目指す

髙島義徳

あの悔しさは忘れない

研究で行き詰まったときはどう対処されていますか。

 ひたすら研究するしかないのでは……。行き詰まって自分が諦めてしまい、同じ研究で他の人が成功したときのあの悔しさはありませんから。「視点を変える」ということはよく言われることですが、逃げずに、怯まず努力するということも必要だと考えています。

そういう経験があるのですか。

 もちろん。自己修復材料の研究では、自分がもたもたしているときフランスの研究者に抜かれてしまったことがありました。私たちは完璧にうまくいくような凝った分子設計をしていましたが、その研究者はとてもシンプルな分子を設計していました。やられたなと思いました。その研究者は高分子物理が専門なので、簡単な分子設計で要点を押さえればいいと考えていたのでしょう。重要なポイントは、可逆的な結合で自己修復が達成できるかどうかということなのですから、分子にこだわりすぎるのはよくないなと反省しました。

今後の目標をお聞かせください。

 共有結合性材料の限界を超えることですね。いろいろなアプローチがあると思いますが、材料自身が意思を持つ、機能を生み出すというところがいいかもしれません。新たな価値観を創造するために、私の場合は高分子科学から挑戦していると思います。

毎日、どのように過ごされているのですか。

 講義もしていますが、私自身は毎日研究を楽しんでいます。自分で体を動かすことは少なくなりましたが、実験をしている学生たちとは毎日2時間くらいディスカッションしています。いろいろ共同研究などもしているので日中はメールが多く、なかなか書き物ができません。そのため最近は夜遅くまで大学にいることが多くなっています。夕方の6時頃になるとメールがピタッと来なくなるので、夜の8時、9時頃から書き物をするのですが、思考をめぐらすといってもその頃にはもうあまり体力が残っていなくて。そうするとだんだん帰宅するのが面倒になり、つい研究室に泊まることもあります。

 休日は共同研究の案件などで東京に行くことが多く、最近はスカイプで2人の子どもと会話をしていたりします。いろいろ大変なこともありますが、好きでやっていることですから全然苦にはなりません。

大阪大学大学院 理学研究科 高分子科学専攻 講師 髙島義徳[たかしま・よしのり]1974年生まれ。京都工芸繊維大学 繊維学部高分子学科卒。大阪大学大学院博士課程修了(理学研究科高分子科学専攻)、日本学術振興会特別研究員、大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻助教などを経て2016年7月より現職。2014年には文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞している。大学生のときはアイスホッケーをしていたが「今は体力に自信がありません。最近は階段がしんどい」とこぼす。

「第33回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞」

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