ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

CO2を資源として活用できる道を切り開く

斎藤 進

カルボン酸を水素化する触媒を発見

そうした問題を解決することがまず必要になるわけですね。

  高酸化状態にあるものを還元するには、水素の形で電子を入れていくことが必要になります。その電子を入れていくことのできる触媒を私たちは発見しました。これからどんどん応用ができるようなシンプルな触媒の構造を見つけたのです。アインシュタインが「アズ・シンプル・アズ・ポッシブル」と言っていますが、シンプルというのはとても重要なことです。シンプルだからこそ応用の幅が広いからです。私たちはカルボン酸を水素化する原理のようなものを見つけたと言ってもいいでしょう。

いつ頃、見つけたのですか。

  この研究を始めたのが5年くらい前からで、その1年後くらいに見つけました。最初のうちはいろいろや ってみてもうまくいきませんでした。どんな構造の分子の触媒があればいいのか、見本になるようなものが全くなかったので、ウィルキンソン型のルテニウム錯体に戻って、これを基盤にいろいろやっていくうちに、高温・高圧下という条件ではありましたが、カルボン酸の水素化ができるようになったのです。これがヒントになって調べてみると、過去にこういう試みはほとんどされていないことが分かりました。より頑丈な固体触媒で、熱と圧力をガンガンかけて強引に水素化する方法はありましたが、それよりもよほど壊れやすい分子触媒で高温・高圧ではとても無理、低温・低圧でというのも無理だと思われていたのでしょう。

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