ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

新たな有機合成法の確立を目指す

新谷亮

布を縫い合わせるように反応させる

縫合というのは、縫い合わせることですが、どういう反応なのですか。

 比較的合成が容易な2種類の化合物を前駆体として用い、遷移金属触媒によって反応させ、一気に複数の炭素―炭素結合を形成しながら架橋型π共役分子を構築するというものです。おっしゃる通り、2枚の布を縫い合わせるように反応させるので、縫合反応と名付けました。最初に論文発表したのは2016年で、今はこのプロセスを繰り返すことで新しい構造の高分子化合物をつくれるのではないかという研究も進めています。ある程度成果は出つつあり、繰り返してどんどんつながるようなものがつくれるようになってきています。

先ほど、つくって終わりではなく、物性なども調べると話されましたが、できたものにはどういう特徴があるのでしょうか。

 これはケイ素でつながった構造体です(下図)。別の元素で似たような構造のものもありますが、性質は明らかに違います。有機化合物は、耐久性とか安定性の面で弱いことが多いとされています。例えば有機太陽電池の分野では、効率のよさを強調した論文はたくさんありますが、一方で耐久性に問題があったりすることが多いのです。ところが縫合反応でつくった構造体も有機化合物ですが、割と安定性が高いのです。したがってそれなりの使い道があるのではないかと考えています。今、東京工業大学の真島豊教授と共同で、導電性の単分子デバイスの研究をしていますが、微小な電極の隙間にフィットする有機分子を導入することで導電性のナノデバイスを作製しています。安定して動作することはすでに確認できていて、面白い現象もいくつか見つかっています。

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