ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

セルロースから液晶材料を創製

古海誓一

社会インフラや医療介護分野での応用も

その材料はこれまでの液晶と同じように表示装置などに使われるのでしょうか。

 現在、実用化されているネマチック液晶のディスプレイはとてもよくできていて、スイッチングスピードがとても速く大面積化も可能です。だから同じようなところに応用しようとは考えていません。今、お話ししたような、色が変わる特性を生かせる新しい展開を考えています。

具体的に言うとどういう用途ですか。

 日本では近年、インフラの老朽化が大きな問題になっています。2012年に中央自動車道の笹子トンネルで天井のコンクリート板が崩落する痛ましい事故が起きたことは、覚えている方も多いと思います。そこでこのコレステリック液晶材料で作ったフィルムをコンクリートの壁などに貼り付けておけば、それまでになかった力が作用すると色が変わり、誰でも外壁の劣化や危険性を察知することができるようになる可能性を秘めています。そういうひずみセンサーとか圧力センサーに応用できるのではないかと考え、企業との共同研究も始めています。

社会インフラ、あるいは建設分野への展開ですね。その他の分野はいかがですか。

 これはある看護大学の先生と共同で研究しているのですが、体に貼るとかベッドのシーツの下に貼るとかすれば、寝たきりの高齢者の体にかかる圧の変化がわかるのではないかと考えています。そういう変化が遠隔でわかるようになれば、褥瘡、いわゆる床ずれを防ぐことができるかもしれません。このフィルムは体に貼り付けることもできるので、ウェアラブルセンサーへの応用も考えられます。

それは面白い着想ですね。どこからそういう発想が出てくるのですか。

 実は私たちの研究成果は学会だけでなく新聞やテレビでも紹介されたことがあります。そうするといろいろな分野の方々から問い合わせなどが来るんです。褥瘡に関する研究はまさに、そうした報道を見た看護大学の先生からの問い合わせがきっかけで始めたものです。

暗室での実験の様子

こうした研究にはいつから取り組んでこられたのですか。

 以前、所属していた物質・材料研究機構でもコレステリック液晶の研究はしていましたが、それは石油資源から作ったもので、セルロースからつくるコレステリック液晶の研究を始めたのは2014年に東京理科大に移ってきてからです。

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