ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

新しい原理で世界を一変させたい

廣戸 聡

現実味を帯びた『ミクロの決死圏』

分子コイルというお話が出ましたが、それ以外にはどんな材料に結び付きそうですか。

 こういう歪みのある分子は、安定の構造に戻ろうとして、圧力など外部からのいろいろな刺激に応答して構造を変化させようとする性質があります。私たちが最近、注目しているのは、その構造を変化させようとするときのエネルギーを電気に変換させることはできないかということです。それができれば圧電センサーの素子にすることが可能になるかもしれません。今の圧電素子は無機物が主流で、鉛を使ったものもたくさんあります。ここはまだ有機材料が踏み込んでいない領域ですが、有機物でつくることができれば生体適合性があり、より変換効率のいいものにできる可能性があります。

それは例えばウェアラブルデバイスの動力源とかですか。

 実は高分子を使った圧電材料をウェアラブルデバイスの動力源にするという研究をしている先生はすでにいらっしゃいます。でも、高分子は効率があまりよくありません。分子レベルの圧電素子ができれば、血管の中に入れるような分子ロボットの動力源にできるかもしれません。

昔の映画『ミクロの決死圏』のような……。

 そうですね(笑)。

2014年に松籟財団の助成を受けられた研究はその後、どうなりましたか。

 ソレノイドをつくろうという研究のことですね。この研究自体、さらに発展させようとしていますし、この研究がその後、バッキーボウルの研究につながった面もあります。

助成金はやはりプラスでしたか。

 もちろんです。助成をいただいたことは単に資金的なことだけでなく、自分の提案が採択され「この提案は価値がある」と認めていただいたことになりますので、採択されたこと自体がモチベーションになりましたよ。

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