ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

独自の手法で創薬資源を開拓

菊地晴久

変わった構造に出合うとわくわくする

医薬品は創薬から開発候補品になるまで、シード化合物からスタートし、ヒット化合物、リード化合物へと進んでいくと聞いています。先生はリード化合物までは手がけたいということですか。

 そうですね。もとになる天然化合物を誘導体化してシードからリードまで持っていけるようにしていますし、そこまでが自分の研究の範疇だと考えています。自分が取った化合物には愛着があり、製薬企業と共同でやるにしてももとになるところまでは自分で合成します。今はリードの段階まで進んでいるものもたくさんありますが、そこから先に進むとなると、ハードルが一気に高くなります。

有機溶媒で抽出した後の液を濃縮する

そもそもなぜこういう研究を始められたのですか。

 私が大学で研究者生活を始めたのは20年くらい前のことです。その頃から、新しい天然化合物は取り尽くしたと言われるようになっていました。私は人と同じことをしていても面白くないと思うタイプですし、薬になるかどうかよりも、「変わった構造を見ているとわくわくする。だから自分で扱いたい」という思いが強いのです。変わった化合物を取り扱いたいということが、一番のモチベーションのような気がします。

薬学部のご出身ですが、化学者としての性が強い、ということですね。

 そういうところは確かにあると思います。

2015年に松籟財団の助成を受けられています。そのときはこの研究をされていたのですか。

 そうですね。前年に多様性拡大抽出物というテーマの論文を発表し、「さぁ、これからこの研究を広げていこう」と考えていた矢先のことでした。だから松籟財団の助成金はこの研究にとって経済的なベースになり、本当に助かりました。それが今の研究にも大きくつながっていると実感しています。

慶應義塾大学 薬学部天然医薬資源学講座教授 菊地晴久[きくち・はるひさ] 1975年、宮城県生まれ。東北大学薬学部卒業。同大大学院博士課程退学。薬学博士。同大大学院薬学研究科助手、助教、准教授を経て、2021年4月より現職。ナショナルバイオリソースプロジェクト「細胞性粘菌」運営委員。趣味はジョギング。今は研究を終えた後、大学周辺の芝公園などを深夜に走るのが息抜きという。

[第33回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]

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