ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

植物と昆虫の攻防を分子レベルで解き明かす

虫が植物の葉を食べる。
植物はそれを感知し、防御しようとする。
新屋友規さんは、そうした植物と虫の
相互作用の解明に挑み続けている。

新屋友規

岡山大学 資源植物科学研究所
植物・昆虫間相互作用グループ
准教授

自らの身を守る植物たち

こちらの資源植物科学研究所は、ずいぶん長い歴史のある研究所のようですね。

 岡山県倉敷市にある大原美術館の創設者として知られる、大原孫三郎氏によって設立されたのが1914(大正3)年ですから、もう110年になります。植物科学に特化した研究機関として活動し、1.5ヘクタールの実験圃場(ほじょう)も備えています。

ここで先生はどんな研究をされているのでしょうか。

 私が所属しているのは植物・昆虫間相互作用グループという研究室で、植物と昆虫の攻防を分子レベルで解き明かそうとしています。特に私たちは植物側の立場から、植物が虫による食害から身を守るメカニズムについて研究しています。

虫による食害というのは、虫が植物の葉を食べたりすることですか。

 そうです。ここの圃場では稲を栽培していますが、よく見ると葉がかじられていたり、筒状に巻かれていたり、色が変わっていたりすることがあります。あれは虫の仕業です。クサシロキヨトウという蛾は、幼虫のときに稲の葉を食べます。今はこの虫と稲の関係を研究対象にしています。

幼虫を使った食害実験の様子

その虫を選んだのはなぜですか。

 この研究室のガリス・イバン先生が本学に赴任したときに、何種類かの虫を圃場で採取しましたが、その中の害虫の1種類がクサシロキヨトウでした。飼育がしやすいということもあったと思います。この虫の幼虫が稲の葉を食べるわけですが、虫にとっては生育のために必要なことでも、稲にとっては好ましくありません。植物側も虫による害を黙って受け入れているわけにはいかず、さまざまな対抗手段を講じています。

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