One Hour Interview
新たな手法を開発して既存分子の限界を破る
岡野健太郎
医薬品などの開発が加速
この触媒の発見は世界的な権威のある化学誌『ACS Catalysis』に掲載され、表紙にも採用されたそうですが、どのようにして発見されたのですか。
実は偶然の発見なんですよ。研究室の学生が、従来とは異なる位置でハロゲンダンスを引き起こすために、いくつかの添加剤の効果を調べていました。ある日、反応が起こる位置は変わらなかったものの、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を触媒量加えたときだけ、ハロゲンダンスが異常に加速される現象を見つけました。その理由を詳しく検証したところ、反応系の中で生成した、ホウ素を含む新規化合物が触媒として機能する可能性にたどり着いたというわけです。
その触媒を使ってハロゲンダンスを制御できるようになったことで、どのようなことが実現するのでしょうか。
この触媒によって、医薬や農薬などの研究開発にかかる時間を大幅に短縮できると期待されます。候補化合物を最終的に決定するためには、置換様式の異なる化合物を幅広く合成し、その性質を調べる工程が必要です。さまざまな変換が可能なブロモ基を合成の終盤で動かせるハロゲンダンスは、多種類の候補化合物群の合成に威力を発揮するはずです。例えば、ある候補化合物の合成に10段階必要であれば、従来、置換様式の異なる2種類の化合物の合成は合計20段階のところ、合成の終盤でハロゲンダンスを用いれば段階数がほぼ半分になる、というイメージです。