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次代への羅針盤

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第3世代有機EL素子開発で世界をリード

2012年、第3世代の有機EL素子を開発し、一躍世界中から注目されるようになった
安達千波矢氏。内閣府による「最先端研究開発支援プログラム」で
優れたTOP研究者30人のひとりに選ばれている。もともとは物理が専門だったが、
有機物に電気を流せるという話に興味を惹かれて化学の世界に越境。
合成のテクニックも体得し、「物理と合成の両方分かるのが私の強み」という。
第3世代有機EL素子は今、実用化の段階を迎えつつある。
だが安達氏自身はすでに次を見据えている。

Chihaya Adachi

安達千波矢

九州大学大学院工学研究院応用化学部門主幹教授
最先端有機光エレクトロニクス研究センター長

物理から有機へ越境

 学部生のときは、物理学を専攻していました。当初は物理がとても好きでしたが、3年生くらいになると、途端に難しくなり、特に量子電磁力学の講義では、24時間数式を解いているのが好きだというような人でないと、この分野ではやっていけないのではないかと感じました。そう思い悩んでいた頃、当時、理化学研究所にいらした雀部博之先生から、有機物に電気を流せるという話を聞き、ピンときました。直感的にこれは面白そうだと思い、卒業研究は有機物の半導体特性や光物性の研究を理研で行いました。

 プラスチックなどの有機物に電気を流す研究はその当時始まったばかりで、研究している人もまだ少ない時代でした。私は実験が本当に好きで、24時間実験をやっても苦になりませんでした。気がついたらこの研究にどっぷりはまっていました。

 そのため、大学院では有機半導体の研究ができる九州大学の応用化学を選びました。化学の学科に物理の学生が入ってきたということで、研究室の先生から勧められたのが有機EL(エレクトロルミネッセンス)の材料研究でした。

 「研究者で一番大事なのは、研究テーマを見つけること。誰もやっていないテーマを見つけることが大きな価値になる」

 先生はよくそう言われていました。当時、有機ELの研究をしていた研究者はおそらく世界でも5、6人しかいなかったでしょう。

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