ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

無理だと思われることに挑戦してこそ有機化学だ

茶谷直人

本の有機合成化学が強い理由

 あるいはこれは、私たちの研究室だけではなく、日本の化学界、特に有機化学界の伝統だったかもしれません。炭素-水素結合の歴史を紐解くと、大阪大学の村橋俊介先生が1955年と56年に炭素-水素結合のカルボニル化をJACSに報告しています。おそらくこれが炭素-水素結合の活性化に成功した最初の例だと思います。その次に出てくるのは、守谷一郎先生と藤原祐三先生の藤原・守谷反応です。お二人とも大阪大学基礎工学部にいらっしゃった方です。

 戦後、日本のものづくりは欧米の物まねでスタートしたと言われます。けれども少なくとも有機化学の世界は違いました。独創性を重んじる姿勢がその頃から連綿と受け継がれてきたのです。有機合成化学の分野で日本が世界をリードしてこられた要因のひとつは、そういうところにあるのではないでしょうか。

 化学ではとにかく独創性が大事です。新しい反応や現象を誰が最初に見つけるか。化学ではそれが決定的に重要です。最初に見つけた人のことは、リスペクトしなくてはいけない。だから有機合成、有機金属化学の分野では、その反応を誰が最初に見つけたものなのか、必ず論文に書きます。化学の世界ではそれがコンセンサスになっています。

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