ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

すべては、全合成から始まる

竜田邦明

こだわりを持って愚直に取り組む

 今はグローバル化の時代です。メイド・イン・ジャパンから、メイド・ウイズ・ジャパンになった。世界を相手にするのが国際化なら、世界と一緒にやるのがグローバル化です。だから世界の人と付き合うことが大事です。日本の研究者はもっと世界に友達の輪を広げて、ネットワークをつくった方がいい。もちろんそのためには、自分が友達から尊敬され、力を貸して欲しいと言われるようなレベルにならないといけません。私はこの研究をするのだというこだわりと信念を持ち、忍耐強く愚直に取り組む。そうすればグローバル化の時代にも必ずチャンスをつかめるはずです。

 天然物には、「お前には征服させないぞ」という誇りがあります。全合成はそこを突破しないとできません。特に最後の1工程、2工程には、アイガーの北壁に匹敵する困難が待ち受けています。それを承知で挑む。それはあらゆる技を駆使して戦う総合格闘技に通じるものがあります。アイデアや知恵を総動員して戦っていくと、脳がどんどん活性化され感性が研ぎ澄まされていきます。それが大事なのです。完成できなくてもいい。そのプロセスが大事なのです。プロセスこそが、知なのです。これからの時代を担う若い方々には、技術を学ぶ前に、まずそういう考え方そのものを学んで欲しいと思います。

アイデアや知恵を総動員して戦っていくと、脳がどんどん活性化していく。そのプロセスこそが知なのだ。

竜田邦明[たつた・くにあき] 早稲田大学 栄誉フェロー 名誉教授 1940年、大阪府出身。慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了。同大学工学部助手、同教授、米ハーバード大学客員研究員、英ケンブリッジ大学客員教授、仏パリ第6大学客員教授、早稲田大学大学院理工学研究科長、英オックスフォード大学客員教授などを歴任。世界で初めて4大抗生物質の全合成を達成。これまでに全合成した天然物が102種類に及ぶ「Dr.全合成」。日本学士院賞、藤原賞、米化学会賞、瑞宝章など受賞多数。「有機合成の研究は格闘技」「化合物と対話して、問い続けないといけない」というのが持論。

1.5 MB

1 2 3 4 5