ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分の可能性を狭めてはいけない

川合眞紀

女に二言なし

 その分子科学研究所の所長に着任するとき、マネジメントに専念するように言われました。所長は原則として研究禁止なのです。

 昨年3月に東大を退官するとき、若いいい研究者がたくさん育っていたので、研究室をすっかりたたみました。本音でいえば、あれもやりたい、これもやりたいという気持ちは残っていましたが、もし分子科学研究所で研究するのなら、過去を全部断ち切るくらいの覚悟がなければいけない。惰性で研究をするのは嫌だと思い、潔くマネジメントに専念することにしました。女に二言なし、です。

 研究者時代は表面科学を専門としていました。金属表面における分子の振動励起とそれにともなう表面化学反応など、かなり広い領域の研究に取り組んできました。その間に触媒から光触媒、さらに材料の表面科学へと新しい領域の研究にもチャレンジしてきました。新しい分野の研究でも、始めて3年ほどで国際会議に招待される程度の成果を出してきました。

 もちろん研究は自分ひとりでできるものではありません。一緒にやる仲間が常にいました。研究においては、こんなことができたらすごいという思いを仲間が共有することが大事です。それがあれば同じ価値観で同じところを目指すことができます。新しい分野でもそれなりに結果を出してこられたのも、仲間選びがよかったからだと思っています。

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