ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

厳しい状況でも、新しい領域の開拓に挑戦を

材料科学の分野にブレークスルーをもたらした多孔性配位高分子の開発者が今、新たな研究領域の開拓に挑む。

Susumu Kitagawa

北川進

京都大学物質-細胞統合システム拠点 拠点長

物質と細胞の融合領域

 京都大学の物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は、マテリアルサイエンスと細胞生物学を融合し、新たな研究領域の開拓に挑む日本で唯一の研究所です。設立は2007年。研究の目的は、細胞の機能を理解するために必要な化学物質の作製と、細胞の機能を操作する化学物質の作製の2つ。将来的には、細胞機能に触発された機能材料を創製することも視野に入れています。

 iCeMSは2007年から10年間、文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の支援を受け、大きく発展しました。2012年には、当時iCeMSにも所属しておられた山中伸弥先生が、iPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞され、iCeMSの幹細胞に関する基礎研究の一端を担っておられました。

 組織体制にもいくつかの特徴があります。例えばiCeMSでは、研究員のオフィスがオープンスペースになっています。物質と細胞という融合領域を研究するのには、オフィスでも異なる領域の研究者が混在して、コミュニケーションを取りながら刺激し合えるような環境が適しているからです。

 国際性も重視しています。iCeMSでは英語が公用語であり、事務も基本的には英語で対応できます。全研究者に占める外国人研究者の割合は約30%で、女性研究者も約25%います。2018年度はパーマネントポジションにいる教授、准教授の平均年齢が39歳でした。京都大学のほかの研究所や研究科に比べるとiCeMSの若さは際立っています。

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