ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

厳しい状況でも、新しい領域の開拓に挑戦を

北川進

図抜けた表面積の大きさ

 けれども学会からは冷淡な反応しか返ってきませんでした。「そんなものをつくっても価格が高いだけだ」「有機物だから安定なはずがない」

 多孔性材料なら、古代エジプトの時代から活性炭が使われていました。18世紀には天然の石からゼオライトが発見され、19世紀には人工合成もできるようになっていました。何を今さら、ということでしょう。

 それでも私は研究を続けました。PCP/MOFは1㎤の立方体にしたとき、サッカーコート1面に匹敵する表面積を持ちます。この表面積は活性炭やゼオライトをはるかに上回っています。表面積が大きければ、大量の分子の吸着や反応が起こりやすくなります。表面積の大きさは、PCP/MOFの性能の高さに直結するのです。

 やがて、ほかの研究者からも私たちの研究と同じような内容の発表がされるようになってきました。そして、有機物を使っても頑丈な細孔構造をつくれるということが共通認識になっていき、多孔性材料開発が大きく注目されるようになっていったのです。

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