ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

新たなパラダイムを構築し、真理を実証して時代に問う

難波成任

研究屋が増えている

 2008年、私たちは東大に社会人教育のための「エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」(EMP)を立ち上げました。現在、私は研究と教育をしながら毎週金曜と土曜日にはこのプログラムの仕事もしています。すでに12年になりますが、東大のあらゆる分野で最先端の研究をされている先生方を講師に招き、一堂に会してプログラムを進める中で気づいたことがあります。基礎研究が専門で成果の応用に関心のなかった先生と、応用に興味があり基礎に関心のなかった先生がこの10年の間に交流するようになったことです。既存の枠組みに閉じこもろうとする研究屋が国内外で増えている中で、これはEMPの思わぬ効果だと感じています。

 私たちは、つねに未知のことに挑戦し、もう新しい切り口はないと思われていた伝統的なディシプリンでさえも超えて新たなパラダイムを構築し、真理がさらに深遠なものであることを実証して、その成果を時代に突き付け、名ではなくその成果を歴史に残す科学者を目指すべきではないでしょうか。私はそれが本当の意味での哲人だと思います。

 そのためには、目先の皮相的な価値観の変化やブームに惑わされずに夢を描く。今置かれた境遇を安易に嘆かず、まずそれを受け入れ、そこで何事かを成し遂げて次のステップに進む。

 若いときの失敗や挫折の経験は、年を取るほど自信につながるものですから、失敗を恐れてはいけない。そして、知力は努力で、体力は気力で、決断力は分析力で、難局は智慧でカバーすることです。

 そうすれば誰もが悔いのない成功の達成感を味わえるはずです。

知力は努力で、体力は気力で、決断力は分析力で、難局は智慧でカバーする。

難波成任[なんば・しげとう] 東京大学名誉教授 東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授 総長特任補 1951年、東京生まれ。東京大学農学部卒業、同大学院農学系研究科博士課程修了、農学博士。米コーネル大学客員研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授、同農学生命科学研究科教授を経て2017年より同特任教授。専門は「植物病理学」で、ファイトプラズマ(昆虫が媒介する微生物)の研究では世界のトップリーダー。植物の医師認定制度を創設し、東大植物病院を設立した。2010年には国際マイコプラズマ学会エミー・クラインバーガー・ノーベル国際賞をアジアで初めて受賞した。紫綬褒章受章、日本農学賞、日本学士院賞なども受賞。趣味はジョギング、ハイキング、読書など。『週刊東洋経済』などビジネス誌も読むという。

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