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次代への羅針盤

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大学や企業の壁を越えもっと外へ

片岡一則

5年後には難治性がんも治る

 2045年までに体内病院をつくるのが目標と前述しましたが、これは理想的なナノマシンが普及するという意味であり、そこに至るまでには第一世代、第二世代、プロトタイプというプロセスがあります。

 現在はすでに臨床試験の段階に進んでいるものもいくつかあります。もうだいぶ前になりますが、すい臓がんの患者さんを対象とした治験を行い、標準治療では延命効果が3カ月しかなかったものが、全例で生存期間が1年以上になったという結果を出したこともあります。現在は頭頚部がんを対象にした第Ⅱ相の臨床試験を行っているところです。オプジーボのような免疫チェックポイント阻害薬※もいいでしょうが、一部の患者さんにしか効かないという問題があります。高分子ミセルと組み合わせれば、より広範囲の患者さんに適用していくことが可能になります。

 今の研究が順調に進めばおそらく今後5年以内には、すい臓がんなどの難治性がんもある程度治すことができるようになるでしょう。

※免疫細胞(T細胞)の働きを抑制する分子を標的とした、がん治療薬のこと。

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