ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

楽観性がなければ冒険も挑戦もできない

魚崎浩平

挑まずに後悔したくない

 私がフリンダース大学で指導を受けたボックリス先生は、電気化学の分野で世界的に有名な方ですが、指導が非常に厳しいことでも知られた存在でした。しかし私はそんな情報にも疎く、「2年でドクターを取るつもり」と毛利さんにいいました。私の留学期間は2年と決まっていたからです。すると毛利さんから「そんなことはあり得ない。オーストラリア人でも、あの研究室でドクターを取るには5~6年かかる」といわれてしまいました。

 私は英語もろくにできない状態でしたが、それでも先生と何度もディスカッションしているうちにだんだん波長が合うようになっていきました。留学する直前の1973年、第一次オイルショックがあり、その頃、石化業界は不況のどん底にありました。帰国してもやることがあまりないと聞いていたため、私は留学期間を半年延長してもらい、結局2年半でドクターを取ることができました。

 帰国して会社に戻ると、オイルショックの後遺症で思い切った仕事ができる状況ではありませんでした。そのとき、私のオーストラリア時代の研究に注目した先生から「オックスフォード大学に研究員として来ないか」と声を掛けられました。任期は3年で、給与は会社の3分の1ほど。今度は留学ではなく転職ですから、任期を終えて帰国しても会社に席はありません。けれども、このとき私はこう思いました。挑戦して失敗すれば、自分の力が足りなかっただけだと諦めもつく。しかし、人生の最後にあのときこうしておけばという後悔をするのは嫌だ、と。もちろん今振り返ってみて、行ってよかったと思っています。

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