ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

楽観性がなければ冒険も挑戦もできない

魚崎浩平

外に出ると視野が広がる

 オックスフォードに勤めて1年ほどした頃、毛利さんから「北大理学部化学科で助教授を公募しているが、応募したらどうか」と連絡がありました。しかし、日本での実績がほとんどないため、採用されないだろうと思いつつ応募したところ、思いもかけず採用となり、オックスフォードの任期途中で北大に赴任しました。北大理学部化学科勤務とはいえ、全学教育(教養部)担当であり、講義や学生実験の負荷が大きい仕事でした。

 幸い1990年には物理化学講座担当の教授に昇格しました。それまで北大理学部化学科では、専門課程を担当する教員が全学教育(教養部)担当に転じるケースは多くても、その逆はありませんでした。2010年に北大を退職するまで19年半教授として務め、その間総長補佐や触媒化学研究センター長(評議員)など運営業務にも関わりました。

 教授在任中、9人の職員を採用しましたが、現在では全員が教授(客員教授)になっています。私の研究室では、博士課程を終えた学生をそのまま助手としたことも、助手を講師や助教授に昇格させたこともありません。これは学生や職員にとっては、他大学や他の研究室に出ることで視野が広がり、私にとっても、他研究室から人を採用することで新しい考え方や視点が入ってきて刺激になる、という考えによるものです。

 私は光電気化学的水素発生、生物電気化学、自己組織化単分子層、非線形分光、表面電気化学など、多様なテーマに取り組みましたが、反省すべき点もありました。電気化学という分野の研究をしてきたのですから、もう少し応用に近い研究もすべきだったのではないかと。会社員時代の上司からも、自分の研究成果を世の中に出すことが大事なのではないかといわれたことがあります。

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