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伝説のテクノロジー

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国産の材料にこだわり名器をつくる信州の巨匠

ヴァイオリン製作者 井筒信一さん

一流の演奏家が弾きこむことで楽器も成長

 ヴァイオリンの他に井筒さんはチェロやヴィオラもつくる。子ども用の小さなヴァイオリンもつくる。「教える時間を取られるくらいなら自分の仕事をしていたい」という理由で弟子を取ったことはないが、一般の人向けのヴァイオリン製作教室は開いている。今は長男の功さんもヴァイオリンづくりをしている。

 「いつも最高のものをつくろうという気持ちでいます。でも、できあがったときには、こういう音になったのかと思い、次はもっといいものをつくろうという気になります」

 井筒さんのその言葉を聞いて、ある演奏家が「では、われわれは未完成のヴァイオリンを買わされているのか」と気色ばんだことがある。それに対して井筒さんはこう答えた。

 「そうかもしれませんね。でも、いい楽器というものは、一流のプロが弾きこんでいくうちに成長して、ますますよくなっていくのです。だから僕たちは、弾きこんでよくなる楽器をつくらないといけないのです」

 巨匠と呼ばれながら、偉ぶる様子など微塵も見せず、井筒さんは今日も黙々とヴァイオリンをつくる。一流の演奏家とともに成長していく名器をつくるため、そして、父との約束を守るために。

作業場の2階には、天井の高い小さなホールがある。風通しのよいこのホールには、ピアノもあり、時折、演奏会が開かれる。

いづつ・しんいち 1936年、長野県生まれ。20歳のとき、偶然出会った人からヴァイオリン製作者を紹介され、この世界へ。その後独立し、松本市でヴァイオリン製作の工房を開く。現在、「弦楽器いづつ」でヴァイオリン、チェロ、ヴィオラを製作するとともに調律、修理なども手掛ける。ヴァイオリンなどの製作教室を主宰する傍ら、自宅のホールで演奏会や演奏教室も行っている。

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