次代への羅針盤
社会に届いてこそ研究には意味がある
武岡真司
高分子化学の技術でがん治療目指す
先進理工学部の発足を機に、私はそれまでの応用化学から生命医科学へと専攻を変更しました。そして、もともとの専門である高分子化学の技術を使ってナノシート(高分子超薄膜)の研究を始めました。これも医療分野での展開が目的で、小型のLEDを無線給電する回路を搭載したナノシートを体に貼り、光線力学療法でがん細胞を特異的に破壊する仕組みを開発しています。
また、ナノシートの技術を応用して、肌に貼ることのできる電極も開発しました。体にほとんど負荷をかけず、心電図や筋電図といった生体情報を24時間モニタリングできるもので、スポーツ科学の研究者と共同開発しています。野球のピッチャーの手にこれを貼って投球動作を測定したところ、これまではわからなかった手の筋肉の使い方が見えるようになりました。これにはメジャーリーグが興味を示してきました。
以前から行っている人工血小板の研究も継続しており、臨床に向けたプロセスに入っています。また、人工赤血球と人工血小板を組み合わせた人工血液としての評価も進めています。