次代への羅針盤
社会に届いてこそ研究には意味がある
武岡真司
もっとアピールする姿勢を
ただ、企業の若い人たちを見ていると、もう少し殻を破って積極的に提案や主張をしてもいいのではないかと感じることがあります。自分はこう考えている、これをやるべきだと、もっとアピールしてもいいのではないでしょうか。これは企業人に限らないかもしれませんが、どうもおとなしすぎる気がします。

留学先のU.Penn(ペンシルバニア大学)のベンジャミンフランクリン像の前で、School of MedicineのProf. T. Yonetaniとのスナップ(2000年)
例えば今、音楽やアニメ、ゲーム、スポーツなどの分野では、日本の若い人がどんどん海外に出て行って活躍しています。もしかしたら、アクティブな人たちの関心はそうした分野に向かっていて、大学での研究や企業のモノづくりといった領域にはあまり関心を持っていないのかもしれません。仮に大学で研究したり企業でモノをつくったりする仕事があまり面白いと思われていないのだとしたら、若い人たちの好奇心を刺激し、チャレンジングスピリットを育んでこなかった私たちにも責任の一端があります。
私の研究室には留学生も多いのですが、彼ら、彼女らはとてもアグレッシブです。トランプ政権の政策で、これからは米国に行く留学生が減るのではないかともいわれています。日本の大学が優秀な留学生を確保するチャンスだという人もいます。しかし、ごく一部を別にすれば日本の大学の研究環境は好待遇とは言えず、これからは留学先として日本が選ばれなくなるかもしれません。
そうした状況を改善し、日本の科学技術力を再び高めていくためにも、私たちは社会実装を視野に入れた研究活動に一層注力し、実績を上げていく必要があると考えています。
殻を破ってもっとアグレッシブに

武岡真司[たけおか・しんじ] 1963年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。同大大学院理工学研究科応用化学専攻博士課程修了。工学博士。早稲田大学理工学部助手、専任講師、助教授、ペンシルベニア大学客員研究員を経て2007年より現職。日本化学会、高分子学会などのほかに日本バイオマテリアル学会、日本血液代替物学会などにも所属している。
Polymers for Advanced Technologies (Wiley) やMRS Communications (Springer) のEditor、剣道五段で、好きな言葉は「交剣知愛」。
[第21回 松籟科学技術振興財団研究助成受賞]
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