ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

失敗の観察から本質を見抜く力が養われる

小舟正文

ゼロからの出発「学究生活」

 しかし、私は博士課程を修了した年の9月、会社を退職することになりました。実は博士課程で学んでいたとき、会社が資産運用で失敗し、巨額の損失を出してしまったのです。社長から「小舟君はどこに行ってもいいよ」と言われましたが、私はこんなときだからこそ会社に貢献したいと思い、その申し出を一度はお断りしました。しかし会社は開発どころではない状態になっていたため、やむなく退職を決め、本格的に学究の道に進む決意をしました。

 私は会社員時代に「炭化ケイ素ウィスカーの製造方法」「シーズヒータの電気絶縁充填材料」など多数の特許を取得していましたが、すべて無償で会社に譲渡しました。苦境に立たされていた会社に少しでも役に立てばという思いがあったと同時に、アカデミアの世界でまた新たなテーマの研究に取り組もうと決心していたからです。

 こうして私は1991年、35歳で姫路工業大学の助手になり、2004年に助教授、そして2011年、55歳のときに教授となりました。

 その間、取り組んだ研究テーマは「チタン酸鉛系単結晶及び薄膜の創製とその物性解明」「高性能鉛・非鉛系圧電セラミックスの開発」「無機有機ハイブリッド材料の開発」「マルチフェロイック複合体薄膜の創製とその物性解明」など多岐にわたります。基本的には材料開発がメインで、とりわけ強誘電体ナノプレートやナノ材料の開発では、この分野の学術的発展に少しは貢献できたのではないかと考えています。

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