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伝説のテクノロジー

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真空管アンプが生み出す“本物の音”

オーディオ職人 今井清昭さん

トランジスタではできない!!

 今井さんは音響メーカーなどに勤めた後、1978(昭和53)年、オーディオテクネインコーポレイテッドを設立した。当初はオーディオアクセサリーなどをつくっていたが、メーカーなどが必要以上に音質を変えてしまうことに疑問を感じていた。

 「もっと本物の音を大切にしないと、日本のオーディオ産業は発展しない」

 そんな危機感さえ抱いていた今井さんはある日、取引先から真空管アンプの製作を依頼された。これが大きな転機になった。手づくりで仕上げたアンプの音を聞いたとき、最初は今井さんも「迫力がない」と感じた。だが、もう一度聞いてみて気がついたのである。「コンサートで聞いた音楽は、こんな感じだった。こっちの方が本物の音なのではないか」と。

 幸い、真空管アンプの評判は上々だった。これを機に今井さんは原音に近い音を求め、真空管のアンプづくりにのめり込んでいったのだ。

 「レコードやCDに録音された音楽は、電気信号としてプレーヤーからアンプ、スピーカーに送られていくわけですが、部品を通過するたびに変化してしまいます。原音を再現するには、そうした変化を可能な限り少なくしなければなりません」

 最初から真空管にこだわったわけではない。トランジスタでもできるだろうと考え、試してみたこともある。だが、トランジスタを使った場合、「NFB(負帰還)」と呼ばれる電子回路が大きく音質を変えてしまう。そのためトランジスタは諦めざるを得なかった。単に昔懐かしいからという理由で真空管を使ったのではなく、原音を探求していった結果、たどり着いたのが真空管だったのだ。

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