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伝説のテクノロジー

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真空管アンプが生み出す“本物の音”

オーディオ職人 今井清昭さん

この3年は地獄だった

組み立てる前、部品に帯電防止の導電性塗料をていねいに塗っていく

 組み立てでははんだ付けの作業が重要だ。コテを当てる、はんだを付ける、はんだを離す、コテを離す、という基本動作や、はんだの組成や量、コテの温度管理などは、経験を重ねて体に覚えさせるしかないと今井さんは言う。「腕がいいと、付けた後のはんだの光沢がいいし、富士山のような形をしているものです」

 ちなみにオーディオテクネでは、妻の富子さんや長男の浩亘さんも今井さんからはんだ付けの作業を教わってきた。おかげで今では今井さんに優るとも劣らない腕前だ。

 真空管アンプをつくるようになって30有余年。この間、今井さんはレコードプレーヤーやスピーカーもつくってきた。いずれも基本は受注生産だが、スタンダードなモデルでアンプの価格は87万5,000円。スピーカーも40万円以上する。だから飛ぶように売れるというわけにはいかない。しかも今井さんは、製品の価値を認め、納得した客にしか売らないという姿勢を堅持しているため、セールストークはしないのがモットー。質問には誠実に答えるが、とにかく実際に音を聞いてもらうのが一番だと考えている。

 「デフレ不況が続いたこの3年は地獄でした。年に2台くらいしか売れなかったこともあります。何度も『もう辞めよう』と思いましたよ。家族3人だけの家内工業だから何とかやってこられたようなものです」

左から妻の富子さん、今井さん、長男の浩亘さん。

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