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One Hour Interview

One Hour Interview

生命科学への貢献を夢に、蛍光特性変化を起こす分子を研究

相良剛光

この学問分野を人類に役立つレベルに

それが実現するとしたらいつ頃になりそうですか。

 そうですね……あと10年はかかると思います。

この研究で一番面白いと感じられるのはどういったところでしょうか。

 自分で手を動かして光の変化が見られるのが、とても面白いですね。先日、高校生向けに行ったオープンキャンパスでも、色が変わるところを見せたらすごく興味を持ってもらえました。変化が見えるということは、とても大切なことだと考えています。

挫折のようなものはあったのでしょうか。

 結果が出ないことを挫折というのであれば、確かに今までに挫折もありました。しかし、最終的に結果が出ればいいと考えています。3年間ノーデータであっても、それを挫折とは思わないようにしようと考えながら研究を続けています。

ご経歴を拝見しましたが、2013年7月から2年間、スイスのフリブール大学に留学されていますね。

 はい、フリブール大学のAdolphe Merkle Instituteという研究所に日本学術振興会の海外特別研究員の身分で行きました。新しくできたその研究所のヘッドに知り合いの先生が就任していて、研究内容も近い部分があったので、博士課程時の指導教官の紹介もあり、アポを取ってネゴシエーションしました。お互い研究内容がよくわかっていたので、「君ならいいよ」と受け入れてもらえました。

フリブール大学での2年間はどうでしたか。

 楽しかったですね。もちろん異文化に戸惑うこともありました。日本の大学の研究室とはシステムがまるで異なっていて、17時にはほとんど人がいなくなり、18時には無人になってしまうのです。実験も研究も短期集中型なのです。私はダラダラやるほうなので戸惑いました。

東京工業大学に赴任して初めて独立した研究室を持たれたそうですが、研究室の運営で心掛けていることはありますか。

 とにかくお金を切らさないことです。この研究室には教授も助教もいません。だから私が科研費を切らしてしまうと、研究がストップしかねません。そういう意味でも、松籟財団の助成が決まったときはうれしかったです。

これからのキャリアプランはどう描いていますか。

 どうなるかはまだわかりませんが、好きな研究を続けていきたいと考えています。でも、准教授だと助教を採用できませんが(笑)。

これからの目標を教えてください。

 実用的なメカノセンサーをつくることです。人類に役立つレベルまでこの学問分野を押し上げることが自分の使命だと思っています。

相良剛光[さがら・よしみつ] 1981年、富山県生まれ、東京都育ち。東京大学工学部化学生命工学科卒業。同大大学院工学系研究科化学生命工学専攻博士課程修了。工学博士。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院薬学系研究科特任研究員、北海道大学電子科学研究所スマート分子材料研究分野助教、JSTさきがけ研究者(兼任)を経て2020年4月より現職。その間の2013年から2年間、スイスのフリブール大学に留学。今年の5月に長女が生まれたばかり。休日にはミルクを飲ませたり、オムツ交換をしたりしているが「未知の生命体なので大変」という。

[第37回 松籟科学技術振興財団研究助成受賞]

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